poll - システムコールの説明 - Linux コマンド集 一覧表
名前
poll, ppoll - ファイルディスクリプタにおけるイベントを待つ
書式
#include <poll.h>
int poll(struct pollfd *fds, nfds_t nfds, int timeout);
#define _GNU_SOURCE#include <poll.h>
int ppoll(struct pollfd *fds, nfds_t nfds, const struct timespec *timeout, const sigset_t *sigmask);
説明
poll
()は
select
()と同様の仕事を行う、つまり、ファイルディスクリプタ集合のいずれか一つが
I/O を実行可能な状態になるのを待つ。
監視するファイルディスクリプタ集合は、
fds
引き数で指定する。
fds
は、以下の型の構造体の
nfds
個の配列である。
構造体の fd にはオープンしたファイルのファイルディスクリプタを入れる。
struct pollfd { int fd; /* file descriptor */ short events; /* requested events */ short revents; /* returned events */ };
構造体の events 要素は入力パラメータで、アプリケーションが興味を持っているイベントの ビットマスクを指定する。
revents 要素は出力パラメータで、実際に起こったイベントがカーネルにより設定される。 revents で返されるビット列には、 events で指定したもののどれか、もしくは POLLERR , POLLHUP , POLLNVAL のうちの一つが含まれる ( POLLERR , POLLHUP , POLLNVAL の 3つのビットは events に指定しても意味がなく、対応した状態が真の場合に revents に設定される)。
どのファイルディスクリプタにも要求したイベントが発生しておらず、 エラーも起こらない場合、 poll ()はイベントのうちいずれか一つが発生するまで停止 (block) する。
timeout 引き数は poll ()が停止する時間の上限を設定するもので、ミリ秒単位で指定する。 timeout に負の値を指定すると、タイムアウト時間が無限となる。
events に指定したり、 revents で返されるビットは <poll.h> で定義されている:
- POLLIN
- 読み出し可能なデータがある。
- POLLPRI
- 読み出し可能な緊急データ (urgent data) がある (例えば、TCP ソケットの帯域外 (out-of-band data) データを受信した場合や、 パケットモードの擬似端末のマスタがスレーブ側の変化を見つけたとき)。
- POLLOUT
- 書き込みが停止 (block) しない状態である。
- POLLRDHUP (Linux 2.6.17 以降)
- ストリームソケットの他端が、コネクションを close したか、 コネクションの書き込み側を shutdown した。 この定義を有効にするには、 _GNU_SOURCE 機能検査マクロを定義しなければならない。
- POLLERR
- エラー状態 (出力の場合のみ)。
- POLLHUP
- ハングアップした (出力の場合のみ)。
- POLLNVAL
-
不正な要求:
fd
がオープンされていない (出力の場合のみ)。
_XOPEN_SOURCE を定義してコンパイルした場合には、以下の定義も行われる。 ただし、上記のリストにあるビット以上の情報が得られる訳ではない。
- POLLRDNORM
- POLLIN と同じ。
- POLLRDBAND
- 優先帯域データ (priority band data) が読み出し可能である (普通は Linux では使用されない)。
- POLLWRNORM
- POLLOUT と同じ。
- POLLWRBAND
-
優先帯域データ (priority data) が書き込み可能である。
Linux では POLLMSG も定義されているが、使用されていない。
ppoll()
poll ()と ppoll ()の関係は select ()と pselect ()の関係と同じようなものである: pselect ()と同様に、 ppoll ()を使うと、アプリケーションはファイルディスクリプタの状態変化 もしくはシグナルの捕捉を安全に待つことができる。
timeout 引き数の違いを除くと、以下の ppoll ()の呼び出しは、
次のコールを atomic に実行するのと等価である。
ready = ppoll(&fds, nfds, timeout, &sigmask);
sigset_t origmask;
sigprocmask(SIG_SETMASK, &sigmask, &origmask); ready = ppoll(&fds, nfds, timeout); sigprocmask(SIG_SETMASK, &origmask, NULL);
なぜ
ppoll
()が必要なのかについての説明は
pselect
(2)の説明を参照のこと。
timeout
引き数は
ppoll
()が停止する時間の上限を指定するものである。
この引き数には以下の型の構造体へのポインタを指定する。
struct timespec { long tv_sec; /* seconds */ long tv_nsec; /* nanoseconds */ };
timeout に NULL が指定された場合、 ppoll は無限に停止することがあり得る。
返り値
成功した場合は正の数を返す。この数は 0 以外の revents 要素を持つ構造体の数である (別の言い方をすると、これらのディスクリプタ にはイベントかエラー報告がある)。 値 0 は、タイムアウトとなり、どのファイルディスクリプタでもイベントが 発生しなかったことを示す。エラーの場合は -1 が返され、 errno が適切に設定される。
エラー
- EBADF
- 集合のどれかに不正なファイルディスクリプタが含まれている。
- EFAULT
- 引き数として指定した配列が、呼び出したプロセスのアドレス空間に 含まれていない。
- EINTR
- 要求されたイベントのどれかが起こる前にシグナルが発生した。
- EINVAL
- nfds の値が RLIMIT_NOFILE を超えた。
- ENOMEM
- ファイルディスクリプタ・テーブルを確保するためのメモリがない。
Linux での注意
Linux の ppoll ()システムコールは timeout 引き数を変更する。 しかし、glibc のラッパー関数は、システムコールに渡す timeout 引き数 としてローカル変数を使うことでこの動作を隠蔽している。 このため、glibc の ppoll ()関数は timeout 引き数を変更しない。
バグ
select (2) の「バグ」の節に書かれている、誤った準備完了通知 (spurious readiness notifications) についての議論を参照のこと。
準拠
poll ()は POSIX.1-2001 に準拠している。 ppoll ()は Linux 固有である。
バージョン
poll
()システムコールは Linux 2.1.23 で導入された。
poll
()ライブラリ・コールは libc 5.4.28 から導入された
(これはカーネルが
poll
()システムコールをサポートしていない場合に
select
()を使用してエミュレートを行う)。
ppoll
()システムコールは カーネル 2.6.16 で Linux に追加された。
ppoll
()ライブラリコールは glibc 2.4 に追加された。
注意
いくつかの実装では、値 -1 を持った非標準の定数 INFTIM が定義されており、 timeout の指定に使用できる。 この定数は glibc では定義されていない。