sem_overview - 約束事その他の説明 - Linux コマンド集 一覧表
名前
sem_overview - POSIX セマフォの概要
説明
POSIX セマフォを使用すると、プロセスやスレッド間でその動作を
同期させることができる。
セマフォは整数であり、その値は決して 0 未満になることは許されない。
セマフォに対してできる操作は 2 つである:
セマフォ値を 1 増やす
(
sem_post
(3));セマフォ値を 1 減らす
(
sem_wait
(3))。セマフォの値がすでに 0 の場合、セマフォ値が 0 より大きくなるまで
sem_wait
(3) 操作は停止 (block) する。
POSIX セマフォには、名前付きセマフォ (named semaphore) と
名前なしセマフォ (unnamed semaphore) の 2つの形がある。
名前付きセマフォ
名前付きセマフォは
/somename
という形式の名前で識別される。
sem_open
(3) に同じ名前を渡すことにより、2 つのプロセス間で同じ名前のセマフォ
に対し操作を行うことができる。
sem_open
(3) 関数は、新しい名前付きセマフォを作成するか、既に存在する名前付き
セマフォをオープンする。
セマフォをオープンした後は、
sem_post
(3) と
sem_wait
(3) を使ってセマフォを操作できる。
プロセスがセマフォの使用を終えた際は、
sem_close
(3) を使ってセマフォをクローズできる。
あるセマフォをどのプロセスも使用しなくなると、
sem_unlink
(3) を使ってそのセマフォをシステムから削除することができる。
名前なしセマフォ (メモリベース・セマフォ)
名前なしセマフォは名前を持たない。その代わり、セマフォは、
複数スレッド間で共有されたメモリ領域、もしくは複数プロセス間で
共有されたメモリ領域に置かれる (前者を
スレッド共有セマフォ (thread-shared semaphore)
、後者を
プロセス共有セマフォ (process-shared semaphore)
と呼ぶ)。スレッド共有セマフォは、同じプロセス内のスレッド間で共有された
メモリ領域、例えば大域変数 (global variable) に配置される。
プロセス共有セマフォは、共有メモリ領域 (例えば、
semget
(2) を使って作成できる System V 共有メモリ・セグメントや
shm_open
(3) を使って作成できる POSIX 共有メモリ・オブジェクト)
内に配置しなければならない。
名前なしセマフォは、使用する前に
sem_init
(3) を使って初期化しなければならない。
セマフォは
sem_post
(3) と
sem_wait
(3) を使って操作できる。
セマフォがもはや必要なくなったときや、
セマフォが置かれているメモリを解放する前には、
sem_destroy
(3) を使ってセマフォを破棄すべきである。
Linux 固有の詳細事項
バージョン
バージョン 2.6 より前のカーネルでは、Linux は 名前なしのスレッド共有セマフォのみをサポートしていた。 Linux 2.6 と NPTL スレッド実装を提供している glibc が入った システムでは、POSIX セマフォの完全な実装が提供される。
持続性
POSIX 名前付きセマフォはカーネル内で保持される。 sem_unlink ()で削除されなければ、セマフォは システムがシャットダウンされるまで存在し続ける。
リンク
POSIX セマフォ API を使用したプログラムは cc -lrt でコンパイルし、リアルタイムライブラリ librt とリンクしなければならない。
ファイルシステム経由での名前付きセマフォへのアクセス
Linux では、名前付きセマフォは仮想ファイルシステム (virtual file system) 内に sem. nameという形の名前で作成される。仮想ファイルシステムは通常 /dev/shm 以下にマウントされる。
準拠
POSIX.1-2001.
注意
System V セマフォ ( semget (2), semop (2) など) は古いセマフォ API である。 POSIX セマフォは System V よりも 簡単で、うまく設計されたインタフェースを提供している。 一方で、POSIX セマフォは System V セマフォと比べると 利用できるシステムが少ない (特に、古いシステムでは少ない)。
例
各種の POSIX セマフォ関数を使用した例が sem_wait (3) に記載されている。