cmsg - ライブラリコールの説明 - Linux コマンド集 一覧表
名前
CMSG_ALIGN, CMSG_SPACE, CMSG_NXTHDR, CMSG_FIRSTHDR - 補助データにアクセスする。
書式
#include <sys/socket.h>
struct cmsghdr *CMSG_FIRSTHDR(struct msghdr *
msgh
);
struct cmsghdr *CMSG_NXTHDR(struct msghdr *
msgh
, struct cmsghdr *
cmsg
);
size_t CMSG_ALIGN(size_t
length
);
size_t CMSG_SPACE(size_t
length
);
size_t CMSG_LEN(size_t
length
);
unsigned char *CMSG_DATA(struct cmsghdr *
cmsg
);
struct cmsghdr { socklen_t cmsg_len; /* data byte count, including header */ int cmsg_level; /* originating protocol */ int cmsg_type; /* protocol-specific type */ /* followed by unsigned char cmsg_data[]; */ };
説明
これらのマクロは制御メッセージ (補助データ (ancillary data) とも呼ばれる) を作り、 それにアクセスするために使われる。 制御メッセージはソケットにのるデータではない。 この制御情報は、到着したパケットへのインターフェイス、様々なあまり 使われないヘッダーフィールド、エラー記述の拡張、ファイルデスクリ プタの集合や、Unixにおける信頼情報 (credential) を含んでいる。 制御メッセージは、例えば IP オプションのような追加ヘッダーフィールドを 送るのに使う事ができる。 補助データは、 sendmsg (2)を呼び出して送り、 recvmsg (2)を呼び出して受け取る。 詳細はそれらのマニュアルページを参照。
補助データは struct cmsghdr 構造体のシーケンスに追加データが付加されたものである。 このシーケンスにはこのマニュアルページに書かれている マクロを使ってアクセスすべきで、直接アクセスすべきではない。 使用可能な制御メッセージのタイプについては、 それぞれのプロトコルのマニュアルページを参照のこと。 接続毎の最大補助用バッファサイズは net.core.optmem_max sysctl を使って設定できる。 socket (7) を参照。
CMSG_FIRSTHDR ()は、渡した msghdr に関連した補助データバッファ中の、最初の cmsghdr へのポインタを返す。
CMSG_NXTHDR ()は、渡した cmsghdr の次にくる (有効な) cmsghdr を返す。 バッファに十分な空きが無い場合、NULL を返す。
CMSG_ALIGN ()に長さを与えると、必要なアラインメントを加味した長さを返してくる。 これは定数式である。
CMSG_SPACE ()は、与えたデータ長が占めるのに必要な補助要素 (ancillary element) の バイト数を返す。これは定数式である。
CMSG_DATA ()は、 cmsghdr のデータ部分へのポインタを返す。
CMSG_LEN ()は、 cmsghdr 構造体の cmsg_len メンバにデータを格納する際に必要な値を返す。アラインメントも考慮に入れ られる。 引数としてデータ長をとる。これは定数式である。
補助データを作るためには最初に msghdr のメンバー msg_controllen を、制御メッセージバッファの長さで初期化する。 CMSG_FIRSTHDR ()を msghdr に用いると最初の制御メッセージが得られ、 CMSG_NEXTHDR を使うと次の制御メッセージが得られる。 それぞれの制御メッセージでは、 cmsg_len を初期化する ( CMSG_LEN ()を使う)。 その他の cmsghdr ヘッダーフィールド、そしてデータ部分に対しても CMSG_DATA ()を使って初期化をする。 最後に msghdr の msg_controllen フィールドに、バッファ中の制御メッセージの長さの CMSG_SPACE ()の合計がセットされる。 msghdr についての詳細は recvmsg (2)を参照。
制御メッセージバッファが全てのメッセージを納めるのには短すぎる場合、 msghdr の msg_flags メンバーに MSG_CTRUNC フラグがセットされる。
例
次のコードは、受け取った補助バッファから IP_TTL オプションを探すものである。
struct msghdr msgh; struct cmsghdr *cmsg; int *ttlptr; int received_ttl;
/* Receive auxiliary data in msgh */ for (cmsg = CMSG_FIRSTHDR(&msgh); cmsg != NULL; cmsg = CMSG_NXTHDR(&msgh,cmsg)) { if (cmsg->cmsg_level == IPPROTO_IP && cmsg->cmsg_type == IP_TTL) { ttlptr = (int *) CMSG_DATA(cmsg); received_ttl = *ttlptr; break; } } if (cmsg == NULL) { /* * Error: IP_TTL not enabled or small buffer * or I/O error. */ }
以下のコードは、 SCM_RIGHTS を使い、ファイルデスクリプタの配列を Unixソケットを通して送るものである。
struct msghdr msg = {0}; struct cmsghdr *cmsg; int myfds[NUM_FD]; /* Contains the file descriptors to pass. */ char buf[CMSG_SPACE(sizeof myfds)]; /* ancillary data buffer */ int *fdptr;
msg.msg_control = buf; msg.msg_controllen = sizeof buf; cmsg = CMSG_FIRSTHDR(&msg); cmsg->cmsg_level = SOL_SOCKET; cmsg->cmsg_type = SCM_RIGHTS; cmsg->cmsg_len = CMSG_LEN(sizeof(int) * NUM_FD); /* Initialize the payload: */ fdptr = (int *)CMSG_DATA(cmsg); memcpy(fdptr, myfds, NUM_FD * sizeof(int)); /* Sum of the length of all control messages in the buffer: */ msg.msg_controllen = cmsg->cmsg_len;
注意
移植性のために、補助データへのアクセスには、 ここで述べられているマクロを使うだけにすべきである。 CMSG_ALIGN ()は Linux での拡張であり、移植性を考えたプログラムでは使うべきではない。
Linux では CMSG_LEN (), CMSG_DATA (), CMSG_ALIGN ()は定数式である (それらの引数が定数とみなされる)。 このことは、広域変数のサイズを宣言するのに使える。 しかし移植性はなくなるだろう。
準拠
この補助データモデルは、POSIX.1g draft, 4.4BSD-Lite, RFC2292 に 記述されている IPv6 advanced API, そして SUSv2 に準拠している。 CMSG_ALIGN は Linux の拡張である。
関連項目
recvmsg (2), sendmsg (2)
RFC2292