kazmax - Linux で自宅サーバー

packet - 約束事その他の説明 - Linux コマンド集 一覧表

  1. 名前
  2. 書式
  3. 説明
  4. アドレスのタイプ
  5. ソケットオプション
  6. IOCTL
  7. エラー処理
  8. 移植性
  9. 注意
  10. エラー
  11. バージョン
  12. バグ
  13. 歴史
  14. 関連項目

名前

packet, PF_PACKET - デバイスレベルのパケットインターフェース

書式

#include <sys/socket.h>

#include <netpacket/packet.h>
#include <net/ethernet.h> /* the L2 protocols */
packet_socket = socket(PF_PACKET, int socket_type, int protocol);

説明

packet ソケットは、デバイスドライバ (OSI レイヤ 2) レベルで 生のパケット (raw packet) を送受信するために用いられる。 packet ソケットを使うと、ユーザー空間で物理層の上に プロトコルモジュールを実装することができる。
socket_type には SOCK_RAWSOCK_DGRAM のいずれかを指定する。 SOCK_RAW はリンクレベルヘッダを含む raw パケットを、 SOCK_DGRAM はリンクレベルヘッダが削除された加工済みパケットを示す。 リンクレベルヘッダ情報は sockaddr_ll で共通のフォーマットで入手できる。 protocol には IEEE 802.3 プロトコル番号を ネットワークバイトオーダーで指定する。 指定できるプロトコルのリストは、インクルードファイル <linux/if_ether.h> を参照。プロトコルを htons(ETH_P_ALL) にすると、全てのプロトコルが受信される。 外部から来たパケットのうち指定したプロトコルのものは、 カーネルに実装されているプロトコルに渡される前の段階で、 packet ソケットに渡される。
packet ソケットをオープンできるのは、 実効ユーザーID が 0 のプロセスか、 CAP_NET_RAW ケーパビリティを持つプロセスだけである。
SOCK_RAW パケットでは、パケットをデバイスドライバと受け渡しする際、 パケットデータに変更が行われることはない。 パケットの受信時には、アドレスの解析だけは行われ、 標準的な sockaddr_ll アドレス構造体に渡される。パケットの送信時には、ユーザが指定する バッファに物理層のヘッダが含まれている必要がある。 パケットはそのまま修正を受けずに、行き先アドレスから決定される インターフェースのネットワークドライバにキューイングされる。 デバイスドライバによっては、他のヘッダを常に追加するものもある。 SOCK_RAW は Linux 2.0 の obosolete な PF_INET/SOCK_PACKET と似ているが、互換性があるわけではない。
SOCK_DGRAM はやや高位のレベルで動作する。物理ヘッダは、パケットがユーザーに 渡される前に削除される。 SOCK_DGRAM の packet ソケットを通して送られるパケットは、 sockaddr_ll の行き先アドレスの情報に基づき、適切な物理層のヘッダが付加されてから、 キューに送られる。
デフォルトでは、指定したプロトコル型のパケットはすべて packet ソケットに送られる。特定のインターフェースからのパケットだけを 取得したい場合には、 struct sockaddr_ll にアドレスを指定して   bind (2) を呼び、 packet ソケットをそのインターフェースに結び付ける (バインドする)。 バインドの際には、アドレスフィールドのうち sll_protocolsll_ifindex だけが用いられる。
  connect (2) 操作は packet ソケットではサポートされていない。
MSG_TRUNC フラグが recvmsg (2),  recv (2),  recvfrom (2)に渡されると、 (バッファサイズより大きかったとしても) 常に実際に通信された パケットの長さが返される。

アドレスのタイプ

sockaddr_ll はデバイスに依存しない物理層のアドレスである。

struct sockaddr_ll {
    unsigned short sll_family;   /* 常に AF_PACKET */
    unsigned short sll_protocol; /* 物理層のプロトコル */
    int            sll_ifindex;  /* インターフェース番号 */
    unsigned short sll_hatype;   /* ヘッダ種別 */
    unsigned char  sll_pkttype;  /* パケット種別 */
    unsigned char  sll_halen;    /* アドレスの長さ */
    unsigned char  sll_addr[8];  /* 物理層のアドレス */
};


sll_protocol は標準的なイーサネットプロトコルのタイプで、 ネットワークバイトオーダーで記述する。 インクルードファイル <linux/if_ether.h> で定義されている。 これがこのソケットのプロトコルのデフォルトとなる。
sll_ifindex はそのインターフェースの interface index である ( netdevice (7)を参照)。 0 は任意のインターフェースにマッチする (バインド時のみ有効)。
sll_hatype は、インクルードファイル <linux/if_arp.h> で定義されている ARP 種別である。
sll_pkttype はパケット種別である。指定できる種別は以下のいずれかである: PACKET_HOST (ローカルホスト向けのパケット)、 PACKET_BORADCAST (物理層のブロードキャストパケット)、 PACKET_MULTICAST (物理層のマルチキャストアドレスに送るパケット)、 PACKET_OTHERHOST (他のホストに向けられたパケットのうち、 無差別モード (promiscuous mode: 後述) のデバイスドライバにより補足されたもの)、 PACKET_OUTGOING (ローカルホストから発信され、 packet ソケットにループバックしてきたパケット)。 これらの種別が意味を持つのは受信時のみである。
sll_addrsll_halen は、物理層の (つまり IEEE 802.3 の) アドレスとその長さである。 厳密な解釈はデバイスに依存する。
パケットを送る場合は、 sll_family , sll_addr , sll_halen , sll_ifindex を指定すれば十分である。 その他のフィールドは 0 にしておくべきである。 sll_hatypesll_pkttype には受信したパケットの情報が設定される。 バインドの際には、 sll_protocolsll_ifindex だけが使用される。

ソケットオプション

packet ソケットは、物理層のマルチキャストや 無差別モード (promiscuous mode) を設定して使うことができる。 これには SOL_PACKET と以下のオプションのいずれかを指定して setsockopt (2)を呼べばよい。 バインドを追加する場合は PACKET_ADD_MEMBERSHIP であり、取り去る場合は PACKET_DROP_MEMBERSHIP である。これらはいずれも packet_mreq 構造体を引き数に取る。

struct packet_mreq {
    int            mr_ifindex;    /* インターフェース番号 */
    unsigned short mr_type;       /* 動作 */
    unsigned short mr_alen;       /* アドレスの長さ */
    unsigned char  mr_address[8]; /* 物理層のアドレス */
};


mr_ifindex は、ステータスを変更したいインターフェースの インターフェース番号である。 mr_type パラメータは実行する動作を指定する: PACKET_MR_PROMISC は、共有している媒体からの全てのパケットを受信できるようにする (しばしば ``無差別モード (promiscuous mode)'' と呼ばれる)。 PACKET_MR_MULTICAST は、そのソケットを、 mr_addressmr_alen で指定される物理層のマルチキャストブループにバインドする。 PACKET_MR_ALLMULTI は socket を up にして、そのインターフェースに到達したすべての マルチキャストパケットを受信できるようにする。
昔からある ioctl だけでなく、 SIOCSIFFLAGS , SIOCADDMULTI , SIOCDELMULTI を同じ目的に用いることができる。

IOCTL

SIOCGSTAMP を用いると、最後に受信したパケットのタイムスタンプを得ることができる。 引き数は struct timeval である。
さらに、   netdevice (7) および   socket (7) で定義されている標準の ioctl はいずれも packet ソケットに指定可能である。

エラー処理

packet ソケットは、パケットをデバイスドライバに渡すときに 起きたエラーしか処理しない。遅延エラー (pending error) に関する概念は持っていない。

移植性

Linux 2.0 では、 packet ソケットを得る方法は socket(PF_INET, SOCK_PACKET, protocol ) を呼ぶやり方しかなかった。この方法はまだサポートされているが、 用いないことを強く推奨する。現在の方法との主な違いは、 SOCK_PACKET ではインターフェースの指定に古い struct sockaddr_pkt を用いる点である。これには物理層からの独立性がない。

struct sockaddr_pkt {
    unsigned short spkt_family;
    unsigned char  spkt_device[14];
    unsigned short spkt_protocol;
};


spkt_family はデバイスのタイプ、 spkt_protocol<sys/if_ether.h> で定義されている IEEE 802.3 プロトコルタイプ、 spkt_device はデバイスの名前を NULL 終端された文字列で与えたもの (例: eth0) である。
この構造体は obsolete であり、 新しくコードを書く時には用いるべきでない。

注意

移植性の必要なプログラムでは、 pcap (3)経由で PF_PACKET を用いることをお薦めする。ただし、この方法では PF_PACKET の機能すべてを利用することはできない。
SOCK_DGRAM packet ソケットは、IEEE 802.3 フレームの IEEE 802.2 LLC ヘッダの 生成や解析を行おうとしない。 ETH_P_802_3 が送信プロトコルに指定されると、カーネルは 802.3 フレームを 生成して length フィールドに書き込む。 完全に準拠したパケットを得るためにはユーザーが LLC ヘッダを 与える必要がある。到着した 802.3 パケットでは、 DSAP/SSAP protocol の各フィールドは多重化 (multiplex) されていない。 代わりにこれらは LLC ヘッダが前置された ETH_P_802_2 プロトコルとして与えられる。したがって、 ETH_P_802_3 にバインドすることはできない。かわりに ETH_P_802_2 にバインドし、自分自身でプロトコルの多重化を行うこと。 送信のデフォルトは、プロトコルフィールドを持つ 標準の Ethernet DIX encapsulation である。
packet ソケットは入出力の firewall chain に影響をうけない。

エラー

ENETDOWN
インターフェースが up でない。
ENOTCONN
インターフェースアドレスが渡されなかった。
ENODEV
デバイス名が不明。あるいはインターフェースアドレスで指定された インターフェースインデックスが不明。
EMSGSIZE
パケットがインターフェースの MTU より大きい。
ENOBUFS
パケットに割り当てるメモリが足りない。
EFAULT
ユーザが渡したメモリアドレスが不正。
EINVAL
引き数が不正。
ENXIO
インターフェースアドレスに不正なインターフェースインデックスが含まれている。
EPERM
この操作を行うのに必要な権限をユーザが持っていない。
EADDRNOTAVAIL
不明なマルチキャストグループアドレスが渡された。
ENOENT
パケットを一つも受信していない。
上記以外のエラーが、低レベルのドライバで生成されることがある。

バージョン

PF_PACKET は Linux 2.2 の新機能である。これより古いバージョンの Linux では SOCK_PACKET のみをサポートしていた。

バグ

glibc 2.1 には SOL_PACKET の定義がない。回避策としては、以下のようにするとよい。

#ifndef SOL_PACKET
#define SOL_PACKET 263
#endif

この問題は新しいバージョンの glibc では修正されている。 libc5 のシステムにはこの問題はない。
IEEE 802.2/803.3 の LLC の扱い方は、バグと考えても良いだろう。
ソケットフィルターについて記載されていない。
MSG_TRUNC recvmsg ()拡張は非常にまずい対処であり、制御メッセージで置き換えるべきである。 今のところ SOCK_DGRAM 経由でパケットについていた宛先アドレスを得る方法がない。

歴史

インクルードファイル <netpacket/packet.h> が存在するのは glibc2.1 以降である。 それ以前のシステムでは以下のようにする必要がある:

#include <asm/types.h>

#include <linux/if_packet.h>
#include <linux/if_ether.h> /* The L2 protocols */

関連項目

  socket (2),  pcap (3),  capabilities (7),   ip (7),   raw (7),   socket (7) 
標準 IP Ethernet encapsulation に関する情報は RFC894 にある。
IEEE 802.3 IP encapsulation に関する情報は RFC1700 にある。
物理層のプロトコルに関する記述は <linux/if_ether.h> インクルードファイルにある。